突如フリーを泳げなくなった旭が焦りと恐怖に震え、郁弥はリレーの引継ぎが噛み合わず苛立ち、真琴は泳ぐ理由を問われて言葉に詰まり、闇雲に練習を重ね、そして正体不明の胸苦しさにもがく遙。序盤の子どもらしい能天気さから一変して彼らの苦悩や苦痛が始まった、そのシーンに流れていたのが「Serious agony」だ。
Serious :重大な、深刻な
agony:苦悩、精神または肉体の激しい苦痛、感情の激発、もがき、悶え苦しむこと
喉を絞められていくような胸苦しさと不安、緊張感。
緊張感を高めるだけ高めておいて、曲はサントラ4曲目「Pure blue starting」に変わる。
頭上の桜と花びらを上空へ押し上げる強い風、そのさらに上を上昇気流に乗って悠々と舞う鳶。
目を見開いて見上げる地上の遙。
タイトル「映画ハイ⭐スピード!ー Free! Starting Days ー」
このあと七瀬遙cv.島崎信長くんのモノローグに続いてキャスト6人が登壇したんだけど。
忘れない あの瞬間 あの場面
最高の景色と
最高の仲間が
再び ここに
おれはいま、このメンバーでリレーを泳ぎたい
(おれはいま、このメンバーでイベントがしたい)
なんでこの「Serious agony」を開演前のSE的に流したのか。
ここはハイスピのメインテーマとも言える、明るい未来を感じさせる「Pure blue starting」で始めるところだろう?ってなにか腑に落ちないというか、違和感を感じたんだけど。
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最初のコーナーは「映画ハイ⭐スピード!ふりかえり」ということで各キャスト印象に残ったシーンを。
◆椎名旭cv.豊永利行:フリーを泳げなくなった旭が下校時、尚に心情を吐露するシーン
豊永「ここ、旭が泣いてると思われがちだけど、実は泣いてないんです。『悔しくて震えてる』って感じでよろしく、と監督(鶴岡音響監督?武本康弘監督?)に言われて。オレがんばったなあ…」
旭の声は上ずって震えてるし、尚先輩の胸に額を寄せてて顔は見えないから、号泣じゃなくても悔し涙くらいは零したんじゃないかと思ってた。けれどふりかえり映像で改めて見てみると、片手に持ったスポーツバッグの取っ手を旭はギュッと握りしめるけども手は離していない。そこはきっちり描写されてた。泣いたら多分、指の力が抜けてバッグを取り落とすと思う。きわどいところだけど旭は泣いてなく、それよりも悔しさと不安と情けなさで拳を握り締めて震えてたんだな。豊永さんの声も震えてはいたけど鼻が詰まったような涙声ではなかった。
不安で泣くのではなく、悔しさで身を震わせ拳を握り締める。
旭は能天気だけど前向きで、自分の不甲斐なさを悔しがったり情けなく思う性格で、それは強い向上心であり、不屈さであると思う。キャプテン向きの資質というのはこういうところじゃないかな?「(水泳部がお遊びかどうか)分からないから入るんだ」って言葉も旭の強さだよなあ。まだ入学したての中1だから不安定なだけ。年相応の不安定さはあるだろうけど練習と経験を重ねたら良きキャプテン、リーダーになるだろう。早々に旭の資質を見抜いた夏也は人を見る目があるなあ。
っていうことをあの短いシーンで表現した映像と声、「泣いてない」とディレクションした監督、凄いな、と今更のように思った。
続きます。